東北はこれから秋本番となります。今年の夏を振り返えってみますと、暑かったり急に涼しくなったりと落ち着きの良くない気候だったような気がします。そんな中、8月のお盆の前半、何とかお天気が安定しそうな気圧配置となったのを見計らって、鳥海山に向かいました。といいましても頂上を目指すのではなく、その中腹にある雪渓でスキーをするのが今回の目的です。
夏スキーというと月山が有名ですが、それでも何とかスキーができるのは8月初め位までです。これに対して月山より更に北に位置する鳥海山では、なんと9月でも雪渓でスキーができるのです。
もっとも、この時期は真っ白な雪ではなく、陽光や雨で雪渓の表面が融け、黒い泥が混じったガリガリの波立った氷のような斜面で、よほどの物好きでもなければ滑りたいとは思わないような代物です。また、そこは元々スキー場でもなんでもなく、リフトもレストハウスもありません。標高は1700メートルを超え、天候の急変に備えて雨具や防寒具などしっかりとした登山の装備が必要です。また、スキーができる雪渓までは、リュックにスキーの板をくくりつけて登山道をひたすら登っていかなければなりません。
すっきりと晴れ上がった真夏の青空の下、酒田を経由して鳥海山の麓から途中まで車で上がり、山の中腹にある登山道から一般の登山者と一緒に鳥海山の南斜面にある「心字雪渓」を目指します。「心字雪渓」という名前は、山の雪もだいぶ解けた7月から8月にかけての夏の一時期、幾つか残った雪渓が「心」という漢字に見えることからついたそうです。撮影ポイントと時期だけでなく、当日の天候にも左右され、なかなかシャッターチャンスは難しいのですが、今回はお天気にも恵まれて何とか「心」を撮ることができました。写真の心字雪渓の一番上の「点」の雪渓が頂上直下の薊(ルビ=あざみ)坂の斜面です。下からは「点」にしか見えませんが、実際に行ってみると、そこは「点」ではなく、夏スキーをするには絶好の斜面なのです。
「心字雪渓」ができると途中2回程、シールをつけたスキーを脱ぎ、担いで急な登山道を登らなくてはなりません。スキーの板の重さがずっしりと肩に食い込みます。しかし、雪渓の最上部まで登り切り、一息入れてそこから急な斜面を一気に滑り降りる気分は、胸のすくような爽快感です。ガリガリの雪渓でターンを見事に決めることができれば、それまでの苦労も吹き飛んでしまいます。
スキーを終え、無事下山して帰路通った山形市付近の気温は36度を表示していました。車の窓を開けると熱風が吹き込んできます。今しがたまで居た心字雪渓が夢の世界のような夏の一日でした。
さて話は変わって税金のお話です。来年1月1日以降に開始する相続から、相続税の基礎控除額がこれまでの金額より3割ほど引き下げられることが決まっており、将来相続税が課税されないよう、生前に遺産を贈与しておきたいという相談を受けることが多くなっています。以前から住宅資金の贈与の特例や、最近は教育資金の贈与の特例など一定目的の贈与に関して贈与税を課さない、あるいは贈与税を安くする特例が設けられていますが、これらの特例に該当しない贈与は、受贈者(贈与を受けた方)一人当たり年間110万円の贈与税の基礎控除しかありません。それでも年間110万円ずつ10年間連続して贈与を受ければ1100万円にもなり、この贈与税の基礎控除内での生前贈与も時間をかけて行えば生前対策としては有効といえます。ただし、生前贈与を受けてから3年以内に贈与をした方が亡くなってしまうと、その亡くなった方の相続財産に加算され相続税の課税対象とされてしまいますので注意が必要です。次回は、もう少し詳しくこの生前贈与のお話をしましょう。