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その76(りらく2017年7月号)
イチゲの蕾とミズの若葉

  春になって山に降り積もった雪が解けはじめると大量の雪解け水が渓流に溢れ、乳白色の急流となります。これを「雪代(ゆきしろ)」というのですが、この冷たい雪代が収まるまでは釣りになりません。


岩魚の棲む沢 ようやく雪代が治まった5月下旬。泉ヶ岳の麓の渓流に行ってみました。川の流れも穏やかとなって、水も澄んでいます。先ずは森の中に溢れる清気をいっぱいに吸い込みます。若い頃は、魚にしか目が向いていなかったのですが、年を重ねると視野も広がるのでしょうか。もっとも、釣り糸に毛バリを括り付け、狙いを定めて竿を振れば、一瞬にして獲物をしとめたいという狩人の欲望がこみ上げて来るのは、今も昔も変わりません。

毛バリを咥えた岩魚 何投目かで、岩魚が岩陰から出てきて毛バリを咥えました。未だこちらの感覚が戻っていないせいか、合わせるタイミングが少し遅れたものの、しっかりと魚が掛かったのがわかります。暴れる魚を手繰り寄せ、慎重に取り込みます。お腹が鮮やかな橙色の綺麗な岩魚です。濡らした手で魚をそっと掴んで針を外し、放してやります。これがシーズン初めての釣果となったのですが、今シーズンも渓魚との様々な出会いが楽しみです。


 変わって、高齢者の方の財産管理についてのお話です。前回は、成年後見制度について任意後見制度と法定後見制度の二つがあることをお話ししました。今回は、法定後見制度について少し詳しくご紹介します。
 ご本人が認知症等にかかってしまい、ご自身で判断することができなくなった場合でも、周りに家族や親族の方が居て介護を受けながら生活ができている分には、わざわざ成年後見人を付ける必要はありません。この制度が必要となるのは、ご本人が契約の締結やその解除等、法律に絡んだ行為を行う必要がある場合です。外部の方に頼んで介護などのサービスを受けようとする場合や介護施設への入所に関する契約をするにしても、ご本人がある程度判断能力があれば問題ないのですが、そうでない場合は、法定成年後見人を選任してからでないと手続きを進めることができなくなります。
 また、日常の生活においても定期預金の預け入れや解約等の際、金融機関では本人確認を必ず行うことになっており、本人に判断能力がないと認められる場合は、預け入れも解約も行うことができなくなります。
 夫が亡くなり相続が発生した場合、例えば相続人である妻が重度の認知症で判断能力がないと、成年後見人を付けなければ遺産分割協議も相続の登記もできなくなり、ご本人だけでなく、他の相続人にまで影響が出て参ります。実際、私自身昨年父が亡くなり、現在その相続の手続きを行っている最中なのですが、高齢の母は重度の認知症の為、全く判断能力がなくなっており、家庭裁判所に申立て手続きを行って、つい先日家庭裁判所の審判により法定成年後見人を選任してもらったところです。
 一方、この成年後見制度は裁判所の管理の下、第三者に被後見人の財産管理を委任するものですので、被後見人の権利と利益を優先することになり、ある意味他の家族との関係は利益が相反する関係となります。例えば、被後見人の預貯金は、家族の為に使うことは許されず、生前贈与等も一切認められなくなります。遺産分割においても法定後見人が付くと民法の規定に基づく法定相続分通り取得することが基本となり、融通がきかない部分があります。
 以上はほんの一例ですが、大切なことはご自身の財産管理に関して、お元気なうちに財産の状況を把握し、万が一ご自分が認知症にかかってしまっても周りの方に迷惑をかけないようきちんと段取りしておくことです。

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