今年も暑い季節となりましたが、梅雨入り前の6月のはじめ、宮城蔵王で夏スキーを楽しんで参りました。宮城蔵王の観光名所であるお釜周辺には、何ヵ所か大きめの雪渓が残っており、例年ですと6月中旬頃までスキーを楽しむことができます。もちろんリフトはありませんので、自分の足で雪の斜面を登らなければ滑ることはできませんが、山登りとスキーと同時に楽しめると思えば、さほど苦にもなりません。
滑走面がうろこ状になっているスキーですと、履いたままで斜面を登ることができますので、リフトがないところでもこれを使って登っては滑り降りるのを繰り返せば、体力の続くかぎり何度でも楽しむことができるわけです。晴天の下、存分に夏スキーを楽しんだのでした。
今月は、生前贈与と相続の関係について少し詳しくお話ししてみたいと思います。
亡くなられた被相続人のAさんは、数年前に配偶者に先立たれており、法定相続人はAさんの子どもであるB、C、Dの3人です。その遺産は、Aさんの自宅の土地・建物(時価1千万円)と預貯金3千万円の計4千万円です。なお、Aさんは、お亡くなりになる10年ほど前、長男のBさんの住宅の購入資金として500万円の現金をBさんに贈与していました。また、次男のCさんにも同じく自宅の購入資金として300万円の現金を贈与していました。Aさんは遺言書を書いていませんでしたので、その遺産は民法の規定により、法定相続人である子ども3人が遺産分割協議を行って分けることになります。
ところで、法定相続人は子ども3人ですので、各自の法定相続分はそれぞれ1/3ずつとなり、これを基に遺産を分けることになるのですが、被相続人の生前に法定相続人に対して贈与した財産がある場合は、相続開始時点の遺産にその生前に贈与した財産を含めて1/3ずつ分けることになります。遺産だけを1/3で分けると生前贈与でもらっていた方はその分、被相続人から財産を多くもらったことになり不公平となるためです。Aさんの遺産は、次のように分けることになります。
各法定相続人が相続できる遺産の額(これを「具体的相続分」と言います)は、次の通りとなります。
Bさんの具体的相続分(①+②)×1/3-500万円=1100万円
Cさんの具体的相続分(①+②)×1/3-300万円=1300万円
Dさんの具体的相続分(①+②)×1/3=1600万円
法定相続分はそれぞれ同じ1/3ですが、被相続人から生前贈与でもらった分は、遺産分割による取り分から差し引かれることになります。そうでなければ、生前に財産をもらった法定相続人が得することになり、結果として不平等な遺産分割になってしまうからです。