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その148(りらく2023年7月号)

 前回まで、改正された生前贈与税制についてお話ししてまいりましたが、今回は、今年以降の生前贈与対策で選択可能な贈与税の取り扱いについて、その全体像をご紹介したいと思います。
 アウトドアのお話は、今回は紙面の関係で割愛させていただきます。

1 贈与税の暦年課税制度
 受贈者1人当たり年額110万円の贈与税の基礎控除が適用。贈与税の税率は累進税率で、贈与金額が多くなる程、適用される贈与税の税率は高くなります。
 贈与者が死亡し、その相続により財産を取得した相続人等は、相続財産への生前贈与加算があります。今年の贈与に関しては、将来の相続の発生が、その贈与者が贈与した日から3年を経過していれば生前贈与加算はなくなります。来年以降の贈与からは、その遡及期間が4年から最長で7年に毎年1年ずつ延びることになります。

2 相続時精算課税制度
 贈与者は60歳以上の祖父母、父母、受贈者は18歳以上の子や孫に限定。複数年で贈与者毎に2500万円の控除額があり、その金額までは贈与税は課税されません。その後、贈与者が死亡した場合は、この制度を選択した年以降の贈与は全て相続財産に加算され相続税が課税されます。ただし、来年以降の贈与からは、この2500万円の控除の他に年額110万円の基礎控除額が新たに導入され、この基礎控除額の110万円は相続財産に加算されません。
 なお、累計の贈与金額で2500万円を超えると一律20%の贈与税が課税されます。生前贈与加算により相続税が課税された場合は、その課された贈与税は控除または還付されます。

3 住宅取得資金の非課税制度
 贈与者は祖父母、父母、受贈者は18歳以上の子や孫に限定。最大で1千万円まで非課税。なお、住宅の増改築資金もその対象となります。この制度により贈与した財産は、非課税額の1千万円までは生前贈与加算の適用はありません。

4 教育資金の非課税制度
 贈与者は祖父母、父母、受贈者は30歳未満の子や孫に限定。最大で1500万円まで非課税。実際に教育資金として支出した金額に関し、非課税額の1500万円までは生前贈与加算の適用はありません。

5 結婚子育て資金の非課税制度
 贈与者は祖父母、父母、受贈者は18歳以上50歳未満の子や孫に限定。最大で1千万円まで非課税。実際に結婚子育て資金として支出した金額に関し、非課税額の1千万円までは生前贈与加算の適用はありません。

 以上のように1の贈与税の暦年課税制度以外は、すべて祖父母や親から子や孫への贈与に限られた特例制度となっています。換言すれば、将来相続人となる子や孫へ生前に財産を贈与することにより、相続税の負担が少なくなる仕組みとなっていることがわかります。
 これらの特例制度をうまく活用して相続税の節税と子や孫等への支援をお考えになられてはいかがでしょうか?

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