9月のはじめ、未だ連日暑い日が続いているので、涼を求めて鳥海山心字雪渓で秋スキーを楽しんできました。鳥海山の外輪山の南斜面に点在する雪渓が、ちょうど漢字の「心」の字のように見えることから「心字雪渓」と呼ばれています。さすがに9月ともなりますと雪渓も大分小さくなり、一部は完全に消えてしまっていました。それでも、一番手前の大雪渓は、長さ300メートルくらいはあるでしょうか。なんとか5ターンぐらいはできそうです。
登山道からはずれて雪渓に乗ると、吹いてくる風もひんやりしてさわやかです。かいていた汗もどこかへ飛んでいってしまいました。雪渓は、この時期になりますと、雪というよりもザラメが硬く氷のように固まったような状態で、しかも斜面全体がさざ波のように尖っています。転ぶと結構痛くて危険ですので、スキーが暴走しないよう板を完全にコントロールしてターンしなければなりません。何本か雪渓を登っては滑ってを繰り返し、十分秋スキーを堪能して無事下山することができました。
さて、生前贈与に関するお話をしていますが、今回は、生前贈与と遺産相続の関係について、少し詳しくお話ししたいと思います。
相続が発生すると、亡くなられた方の財産(これを「遺産」と言います)は、自動的にその法定相続人全員の共有となります。遺言書がある場合は、その遺言書の内容に従って、指定された相続人に遺産が分割されることになります。遺言書が無い場合は、相続人間で話し合いをしてだれがどの財産をどれだけ相続するかを決めることになります。これを遺産分割協議と言います。なお、相続人以外の方は相続権が無いので遺産分割協議に加わることはできません。
民法では、相続人の相続権を遺産の額に対する割合で規定しています。例えば、相続人が配偶者と子2人の場合は、配偶者は1/2、子は1/2ですので、子が2人の場合はそれぞれ1/4となります。これを法定相続分と言います。遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば、必ずしもこの法定相続分通りに分ける必要はないのですが、どのように遺産を分けるかは、個々の財産について相続人全員の同意が必要です。
ところで、遺産分割協議により、この法定相続分通りに分けることとなった場合、被相続人が生前に相続人に贈与した財産(これを「特別受益」と言います)があるときは、特別受益の額を相続開始時の遺産の額に加算し、加算後の財産の総額に法定相続分を乗じ、特別受益のある方は、その法定相続分を乗じた金額から特別受益の額を控除した金額が、その相続人の取り分(これを「具体的相続分」と言います)となります。つまり、法定相続分通りに遺産を分割する場合は、この特別受益があるのかないのか、あったとしてそれがどれほどの金額なのか、これらのことが明らかでないと、結果的に不公平な遺産分割となってしまうことになるわけです。
そして、特別受益があったにもかかわらず、それを考慮しないで不公平な遺産分割が行われた後にその特別受益の事実が判明した場合は、相続人間でトラブルとなることが考えられます。では、実際に当事者間で秘密裏に行われた贈与が、後で明らかになることがあるのでしょうか? 次回は、この生前贈与と相続税の申告の関係を例にとってお話ししてみたいと思います。